衝撃的力強さのカカオ豆、黒糖の余韻 - ベネズエラ70%チョコレート

ベネズエラカカオ
地域:Hacienda La Sabaneta農園, アラグア州, チョロニ
発酵方法:木箱にて発酵
発酵日数:3-4日間
乾燥方法:天日干し
乾燥日数:4日間

前回のインド70%チョコレートに続き、今回は南米の地、ベネズエラが育んだ力強いカカオを使用した「ベネズエラ70%チョコレート」をご案内します。その奥深い味わいと、作り手の情熱に触れてみてください。

秘境の恵み - チュアオカカオとの出会い

ベネズエラカカオの調達先は、Chuao Tradingという会社です。2019年にミヤサカ家が設立したこの個人企業は、高品質なカカオの産地として古くから知られるチュアオ村の伝統的なカカオ生産を保護し、その価値を世界に伝えることを使命としています。彼らは、地域社会の環境、文化、伝統を守り育てることにも力を注いでいます。

アンリ・ピティエ国立公園内にひっそりと佇むチュアオ村。1660年に設立されたこの地は、独特の地理的条件と気候が、他に類を見ない風味のカカオを生み出すと言われています。住民の多くは、スペイン植民地時代に連れてこられた奴隷の子孫であり、その文化は今も色濃く息づいています。

生産者組合「Hacienda La Sabaneta」からカカオ豆を集荷しています。1885年設立のこの民間企業は、200年以上にわたるカカオ栽培の経験を持ち、スペシャルティカカオの生産に特化しています。彼らの長年の知識と技術が、ベネズエラカカオの品質を支えています。

 

圧倒的な存在感 - 力強さと深みの調和

一言で表すなら、「強い」。いとまのベネズエラ70%チョコレートは、カカオの味、香り、苦味、そして酸味、その全てが力強く主張します。驚くことに、原料となるカカオ豆自体も、他の産地のものと比べて1.5倍ほどの大きさを誇ります。

この力強いベネズエラカカオに合わせるのは、沖縄県産の黒糖。強さには強さをぶつける。その選択が、後味に奥深いコクをもたらします。華やかな香りとは一線を画す、どっしりと重厚で、長く余韻を残す味と香り。そして、渋みというより、舌で感じる収斂味は、まるで上質な赤ワインを思わせます。

さらに、「いとま」のベネズエラは深煎り。コーヒーと同様に、カカオ豆も浅煎りでは酸味が立ち、深煎りでは苦味が出ます。他のチョコレートはなるべく浅煎りで、フルーティな香りと酸味を引き出す「いとま」ですが、ベネズエラに関しては、深煎りにすることで、ただ焦げ臭く苦くなるのではなく、しっかりと火の入ったカカオの芳醇な香りを引き出すことができると判断しました。

強すぎる酸味との対峙

製造において最も苦労したのは、その強すぎる酸味をいかに整えるかでした。インド70%やタンザニア70%のチョコレートが持つ爽やかな酸味とは異なり、ベネズエラ70%の酸味は、鼻をつくような強い酢酸臭を放ちます。製造中はむせて息が詰まるほどでした。

この強烈な酸味を飛ばすために、深煎り焙煎を徹底し、磨砕の工程でも香りを意識的に抜くように努めました。砂糖の配合も数パターン試し、試行錯誤を繰り返しました。繊細なカカオ豆の場合、黒糖の比率を上げると「黒糖のお菓子」のような印象が強くなりますが、ベネズエラに関してはその心配はなく、黒糖の個性的な風味に負けない力強い味わいを持っていたため、砂糖は全て黒糖にするという選択に至りました。

南アメリカ大陸の北部に位置するベネズエラ。その大地のエネルギーが凝縮されたかのような、力強い味わいをぜひご堪能ください。

おすすめのペアリング - 強さを引き立てる大人の嗜好

このベネズエラ70%チョコレートには、ウイスキーやブランデーといった、力強いお酒とのペアリングがおすすめです。熱燗が似合う、どっしりとした日本酒も良いでしょう。そして、言うまでもなく、赤ワインとの相性は抜群です。ぜひ、お酒のお供として、ゆっくりと味わっていただきたいチョコレートです。個人的には、夕食の後にストレートのバーボンとベネズエラ70%チョコを合わせるのが至福のひとときです。

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