青リンゴの芳る、さらりとした余韻 - メキシコ60%チョコレート

メキシコカカオ
地域:チアパス州トゥサンタン地区

前回のベネズエラ70%チョコレートの力強い衝撃から一転、今回はメキシコの大地、チアパス州シエラ地域で育まれたカカオ豆を使用した「メキシコ60%チョコレート」のさわやかな魅力をご紹介します。その奥にある物語と味わいを、お楽しみください。

先住民の息吹 - チアパスの恵み

メキシコ60%チョコレートに使用しているカカオ豆は、サンフランシスコ・デ・アシスA.C.アグロエコロジーセンター(CASFA A.C.)から届きました。1991年、ホセ・アドリアン・カバレロとリヒ・ホルヘ・オーセンシオ・アギラーによって設立されたCASFA A.C.は、メキシコ・チアパス州シエラ地域の先住民と農民の社会経済状況改善と生活の質向上を目指す、社会運動として始まりました。

彼らが生産するカカオ豆は、チアパス州トゥサンタン地区で、豊かな自然とマヤ系の先住民の伝統が息づく土地で育まれます。この地域は、高品質なコーヒー豆の産地としても知られ、その肥沃な大地は、風味豊かなカカオ豆を育む土壌となっています。独自の文化、言語、伝統を守り続けるマヤの人々の手によって、大切に育てられたカカオ豆なのです。

 

 

青リンゴのよう - 繊細な香りと淡麗な口当たり

一口味わうと、まず心を捉えるのは、まるで青リンゴのような、爽やかで甘い香りです。磨砕の初期、30分前後に現れてはすぐ消える、その儚い香りを捉えるため、細心の注意を払いました。磨砕の最終段階、30分前にカカオニブを追加投入することで、熟した果実のような甘い青リンゴの香りに、心地よいナッツのような食感と味わいが加わります。

メキシコ産のカカオ豆もまた、磨砕の初期に素晴らしいフレーバーを生み出すタイプでした。カカオ60%、砂糖40%という配合は、カカオの油分が少ないため、口の中でさらりと溶け、後に重たさが残らない、淡麗な口当たりを生み出します。

難産の末に生まれた調和 - 青リンゴの香りを求めて

この繊細な青リンゴの香りは、現れる時間が短く、すぐに散逸してしまうため、レシピ作りは困難でした。また、カカオ本来の渋みも強く、当初カカオ比率70%で開発を進めていたところ、なかなか美味しいと感じるバランスを見つけることができませんでした。試行錯誤を重ねた結果、カカオ60%という比率で、ようやくこのメキシコ60%チョコレートは完成を迎えました。まさに、難産の末に生まれた、特別な一枚です。

おすすめのペアリング - 温もりと共に、香りを愉しむ

このメキシコ60%チョコレートは、その繊細な香りを楽しんでいただきたいので、温かい飲み物とのペアリングがおすすめです。クセがないため、コーヒー、紅茶、ホットミルクなど、どんな飲み物とも優しく寄り添います。温かいミルクと共に味わう、静かなリラックスタイムは、きっと心安らぐひとときとなるでしょう。

ベネズエラ70%の力強さとは対照的な、メキシコ60%の華やかな香りと優しい酸味のチョコレート。その清らかな香りと、さらりとした口当たりを、ぜひ静かな時間のお供にお楽しみください。

ブログに戻る